研究概要 |
(1)MT合成誘導能を有する6種類の金属化合物を、それぞれマウスに投与し、パラコート(PQ)の致死毒性及びその毒性の標的組織である肺の脂質過酸化に対する効果を調ベたところ、特に塩化亜鉛前投与により顕著な毒性軽減効果が認められた。またこの時のマウスの死亡率及び肺の脂質過酸化レベルの増加と、金属投与による肺組織中MT濃度の増加率との間には有意な負の相関が認められた。さらに代表的なフリーラジカル産生物質である四塩化炭素、メナジオン等についてもPQ同様の検討を行ったところ、塩化亜鉛の前投与によりこれら薬物の示す組織障害に対しても著しい軽減効果を示すことが明らかとなった。(2)gene transfectionの手法よりMT、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD),グルタチオンペルオキシダーゼ(GSH-PX),カタラーゼ(CL)活性が上昇した細胞株(それぞれTF-MT,TF-SOD,TF-GPx,TF-CLと命名)を樹立し、種々の薬物に対する感受性について検討した。その結果、TF-MTではカドミウムに対して、TF-GPx或いはTF-CLでは過酸化水素に対して、TF-SODではPQに対しそれぞれ親株に比ベて明かな耐性を獲得していることが確認された。またTF-GPxにおいては、有機過酸化物に対しても感受性の低下が観察された。さらにTF-CLは、アミノトリアゾール(AT)処理後も細胞質画分と顆粒画分に十分なCL活性を有するため、各種培養条件下での細胞内過酸化水素をATを用いた方法により検出するための極めて有用な細胞株であることが明かとなった。同様の手法を用いて、MTmRNAに相補的なantisenseRNAが発現し、それにより細胞内MT濃度が親株に比ベ減少した細胞株についても樹立することが出来、これら細胞株のもつ特性について検討中である。(3)MT遺伝子を導入したトランスジェニックマウスの作製については、現在もなお継続中である。
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