研究概要 |
アカントアメ-バ性角膜炎の診断にPCR法による迅速DNA検出法を検討した。標的DNAとして18Sリボソ-ムDNA(γDNA)領域を選び,その一定部分を合成するプライマ-を作製,温度,DNAの精製度などPCR反応の諸条件を検討した。またPCR増幅DNAを用いてアメ-バ分離株の制限酵素解析を行い、その迅速確定診断法としての有用性が示された。新たにアカントアメ-バ角膜炎の5症例を経験し,これらに対するイトラコナゾ-ルおよびフルコナゾ-ル内服の効果と,本症の初期と完成期における臨床所見の特徴について報告した。一方,各種コンタクトレンズに対するアメ-バの接着の様相とこれに対する洗浄効果の影響を検討した。患者が装用していたコンタクトレンズを走査電子顕微鏡で観察し,cystと思われる像を観察した。アカントアメ-バ角膜炎のウサギ実験モデルの確立にはもう少し時間がかかると考えている。札幌,東京,那覇の3地域の329カ所から得た土壤計987検体を検索し,70.5%からアカントアメ-バ属原虫が分離され,大部分はpolyphagidsグル-プであった。東京の土壤から分離した174株中からA.astronyxis,A.comandoni,A.castellanii,A.culbertsoni,A.hatchettiおよびA.polyphagaの6種を同定し,いずれもクロ-ン化した。シスト化した個体を30℃で2カ月間維持したが、分類学的標徴の有意の変化はみられなかった。シストの微細構造について,A.astronyxisのシスト孔は4ー7個で,5個までの個体はすべてが赤道面上に配列し,それ以上では赤道と平行する別の平面上に開口する,また分類学的に重視されているostioleやoperculumの形状および相互関係の判定には光学レベルより走査電顕がより信頼できる,およびa.culbertsoniの外壁を構成する物質の構造密度は低いが,非常に厚い層であること,等が明かとなった。
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