研究概要 |
本年度は高度好熱菌Thermus thermophillusからの3ーイソプロピルリンゴ酸脱水素酵素(10Tと略す)の構造解析を2.2A^^°分解能で完成するとともに常温菌Bacillus subtilisからの酵素との融合蛋白質(4M6T)の構造を決定し、3A^^°分解能でXPLORおよびPROLSQ法によりR=0.26まで精密化した。10Tの構造研究から二量体を構成している各subunitはお互いに構造のよく似た二つのdomainsから成立っていることが分った。そのtopologyはLDHやADHとは異なっており、ICDHと同じであった。その一つのdomainはsubunit間の結合に役立っており、もう一つのdomainとともにsubunits間に基質等を結合すると思われる溝を形成している。熱安定性に関与する要因として残基の置換による主鎖の固定化,SーS結合,疎水結合等が考えられているが、本酵素の場合、同族酵素の一次構造と立体構造の比較からsubunits間に存在するLeu246が耐熱性に関与していることを示すことができた。4M6Tの結晶はその外形が非常にきれいであるにもかかわらずX線回折点は3A^^°分解能までしか得られなかった。このことは融合による構造の不自然さによるものと思われる。4M6Tの主鎖の構造は10Tと非常に似ている。また、10Tに比べて置換された残基は殆ど分子表面に位置しており分子内の相互作用やsubunits間の結合に関与していない。この事実は融合蛋白質が耐熱性を持ち、酵素活性を持つことと関連している。本研究で解析された二つの酵素の構造の共通部分の同定が耐熱性の研究にとって不可欠である。補酵素,基質との複合体の構造研究のため、soaking法によって結晶の作成を試みたが、予想される結合位置は分子間にあるため、現在までに成功していない。今後,cocrystallization法などにより結晶化しなければならない。
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