生理活性糖鎖のシグナル伝達とその遺伝子発現

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01440091
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 永井 克孝 東京大学, 医学部(医), 教授 (80072974)
• 研究分担者: 小山内 たか 東京大学, 医学部(医), 教務職員 (60126018) ; 辻 崇一 東京大学, 医学部(医), 助手 (90124677) ; 佐内 豊 東京大学, 医学部(医), 助手 (40150289) ; 岩森 正男 東京大学, 医学部(医), 助教授 (90110022)
• キーワード: ガングリオシド / 糖脂質 / 神経系 / シアル酸 / 糖転移酵素 / リン酸化酵素

研究概要

(1)超微量のGQ1bについては、構造活性相関の解析から、オリゴ糖鎖を絶対的に要求することがわかり、オリゴ糖鎖による抑制実験は糖鎖受容体の細胞表面での存在を明らかにした。続いて、ATPの存在下でGQ1bが3つの細胞表面蛋白質(54、60、64KDa)のリン酸化が抑制されることから、新しいタイプの細胞表面型(エクト型)蛋白リン酸化を主体とする情報伝達系の存在、特に、糖鎖受容体主導のエクト型伝達系(糖鎖のエクトシグナル伝達系)の存在が示唆された。この蛋白キナ-ゼをエクトGgキナ-ゼと名付け、本酵素の精製に取り掛かっているほか、この酵素の特異の特異的阻害剤の探索に取り掛かっている。
(2)培養腎細胞を用いて、GD3ガングリオシドに、イオン、水輸送の促進作用を見いだし、その機構がcAMP依存性でないことを明らかにした。
(3)胸腺のステロイド非感受性細胞(内皮系細胞)の細胞表面で、糖脂質の特異なシアル酸付加が起こることを見いだした。これはT細胞系の胸腺より血中への脱離機構と関係があり、細胞の相互認識機構上重要と考えられる。
(4)生理活性ガングリオシドの多くがb代謝系列ガングリオシドであることから、その遺伝子発現機構を明らかにする目的で各種癌遺伝子DNAを細胞に導入し、ガングリオシド発現を変動を調べた。その結果、b代謝系列ガングリオシドの初発代謝物であるGD3が、核内発現型癌遺伝子であるアデノウイルス初期遺伝子E1Aやmyc遺伝子によって誘導されること、さらにレトロウイルス関連癌遺伝子src、fes、fps、rasなどによってラクト系ガングリオシドSPGやGD1αが誘導されることを明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] M.Iwamori: "Monoclonal antibody-defined antigen of human uterine endometrial carcinomas is Le^b" J.Biochem.105. 718-722 (1989)
• [文献書誌] M.Iwamori: "Differential exposure of the major gangliosides in rabbit thymocytes to vibrio cholerae meuraminidase" J.Biochem.105. 723-727 (1989)
• [文献書誌] M.Kashiwagi: "Significant increase in the antiboby to Gal lー3Gal structure in sera of patients with hepatocellular carcinoma" Cancer.Res.49. 4396-4401 (1989)
• [文献書誌] Y.Nagai: "Bioactive ganglioside-mediated carbohydrate recognition in coupling with ecto-protein phosphorylation" Ciba Foundation Symposium. 145. 119-134 (1989)
• [文献書誌] K.Kubushiro: "Menstrual cycle-associated alteration of sulfogalactosylceramide in human uterine endometrium" Arch.Biochem.Biophys.268. 129-136 (1989)
• [文献書誌] S.Itonori: "Involvement of the acyl chain of ceramide in carbohydrate recognition by an anti-glycolipid monoclnal antibody" Glycoconjugate J.6. 551-560 (1989)
• [文献書誌] Y.Nagai: "Gangliosides and Cancer" VCH,Weinheim,FRG, 32-39 (1989)
• [文献書誌] Y.Sanai: "Ganglioside Cancer" VCH,Weinheim,FRG, 70-77 (1989)