研究概要 |
実験動物の大先輩であるマウスで確立されているデ-タと比較しうる下記の知見を得(Proc.Natl.Acad.Sci.,USA.,88:2545ー2549,1991)、さらに胚致死と関連するゲノムDNA損傷解析実験系をメダカで開発した。 1)自然致死変異に関しては、155,451個の受精卵を検索し、うち9,570個が孵化前後に死んだので、致死率は6.2%である。これはマウスの5.1%とほぼ同じである。 2)383,406遺伝子座を検索し、16個の自然総突然変異をえた。自然総突然変異率は4.2x10^<ー5>/遺伝子座となったが、比較しうる他のデ-タが存在しない。メダカでのみ得られた成果である。 3)自然生存突然変異率は5.5x10^<ー6>/遺伝子座(2/364,146)で、マウスの8.1x10^<ー6>/遺伝子座に比べて少し低いが、統計的なゆらぎの範囲がまだ大きいので、今後なおデ-タの蓄積が必要である。 4)単位放射線量(rad)当りの生存突然変異誘発率を比較すると、マウスの精原細胞、精細胞、精子で22、120、70であるが、メダカでは7.5、51、176であり、マウス対メダカの比はそれぞれ2.9、2.4、0.4となる。 5)以上のデ-タをもとに特定座位生存突然変異の倍加線量を計算すると、マウスの精原細胞、精細胞、精子で37、6.6、12rad、メダカでは98、12、3.2radとなり、マウス対メダカの比はそれぞれ0.38、0.55、3.8となった。これらの結果は、マウスの精原細胞と精細胞はメダカに比べて放射線感受性が顕著に高いことを示しており、実験動物間での種差がある可能性が強く示唆された。 6)瀕死状態の個々のメダカ胚ゲノムDNAを使い、APーPCR法でのDNA損傷を解析する系を確立した。
|