研究概要 |
世界的に最も多い神経疾患の1つである多発性硬化症などの脱髄性神経疾患の病態生理の解明及び治療法の開発といった当初の研究目標をある程度達成することが出来た。 動物実験では。研究分担者がすでに報告しているジギタリス剤の単一神経線維に対する効果(Kaji R.et al.Neurology 39;1364,1989)やジギタリス剤の全身投与の中枢伝導異常に及ぼす影響(Kaji et al Ann Neurol 25;159,1989)に加えて、末梢神経の脱髄モデルラットにおいてもジギタリス剤全身投与後に伝導障害の有意の改善が認められた(Hamano T et al in preparation)。この知見は中枢神経系の脱髄疾患である多発性硬症のみならず、末梢神経系の脱髄疾患であるGuillainーBarre症候群や慢性炎症症脱髄性多発神経症(CIDP)にも本治療法が有効である可能性があることがわかった。 脱髄病変がありながら臨床症状が軽快する多発性硬化症の病態生理を解明するためこれまでに分担研究者らは脱髄によって完全な伝導ブロックがおこらなくとも神経暗号が障害されることを明らかにした(Kaji et al Brain 111;675,1988)。この報告ではこれに対する臨床症状の回復が、この障害された神経暗号の再解釈をより中枢のニュ-ロンが行なう様になるためとしたが、この再解釈がシナプスの再構築によっておこることを今回電顕的に確かめた(Kaji et al,in preparation)。 最後に実際に7例の多発性硬化症患者においてジギタリス剤の投与を試み3例において臨床症状及び中枢伝導障害の改善を認めた(Kaji et al.Ann Neurol 28;582,1990)。
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