研究課題/領域番号 |
01450002
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
末木 文美士 東京大学, 文学部, 助教授 (90114511)
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研究分担者 |
馬淵 昌也 東京大学, 文学部, 助手 (60209682)
佐藤 錬太郎 北海道大学, 文学部, 助教授 (40196291)
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キーワード | 碧巌録 / 圜悟克勤 / 禅 / 宋代思想 / 五山版 |
研究概要 |
本研究は、宋代の禅籍の中でも中国・日本で広く読まれ、大きな影響を与えてきた『碧巌録』(仏果圜悟禅師碧巌録)を取り上げ、その文献的研究を目指したものである。具体的には、第一に諸本及び諸注釈書の調査と収集、第二に語学的・思想史的観点からの正確さに注意しながらの本文訳注の作成を目標とした。この作業を通して、難解な本書の仏教思想史上、及び中国思想史上の位置付けを検討しようというものである。本年度は、第一の面に関しては、主として研究代表者が各地にある諸本の調査と主要なものの写真撮影を担当し、宮内庁書陵部・大東急記念文庫・東京大学図書館・大阪府立図書館などの蔵書を調査した。それらの多くは日本の室町期のいわゆる五山版であるが、その他に朝鮮本及び明版がある。部分的な諸本の対比により、五山版には二つの系統があり、そのうちの一つは朝鮮本及び明版と近く、しかし今日多く流布している系統はそれとは異なる系統のものではないかという見当をつけることができた。さらに詳細な検討は次年度の課題である。次に第二の面に関しては、研究代表者・研究分担者、及びその他の協力者の協力によって、全百則のうち、二十則までの大まかな訳注の原稿を用意した。従来、本書については意訳の類はあるものの、学問的批判に耐えうる訳注は皆無であり、訳注作成の過程で従来の解釈の誤りや不適切な点が数多く見出された。特に、従来は宋代の口語に関する知識が不十分だったため、当時の口語をふんだんに用いた本書のような禅文献の解釈は困難を極めたが、今回最近の中国語学の成果を可能な限り取り入れ、この点の正確を期した。しかし、なお問題点は少なくなく、より詳細な検討は次年度の課題である。
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