研究課題/領域番号 |
01450016
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
梅本 守 大阪市立大学, 文学部, 教授 (60101284)
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研究分担者 |
板倉 徹 和歌山県立医科大学, 脳神経外科, 講師 (40100995)
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キーワード | アルツハイマ-病モデルラット / 神経移植 / 迷走神経節 / 一試行回避学習 / 迷路学習 / マイネルト核 / コリン作動神経系 / イボテン酸 |
研究概要 |
長寿社会を迎える我が国が確実に当面する困難な課題の一つに老年性痴呆の問題がある。本研究の目的は老年性痴呆の一つであるアルツハイマ-病(AD)の脳外科的治療の可能性を模索することである。ADは前脳基底部マイネルト核に存在するアセチルコリン含有細胞の欠落に起因するとする説が有力である。もし、欠落したアセチルコリン含有細胞を外科的に補えば、AD症状の改善がもたらされるのではないか。しかし、神経移植にはドナ-を何に求めるかという倫理上の問題がある。われわれはこの問題をまぬがれる方法として、グラフトを迷走神経節とし、これを自家移植することとした。本年は初年度でもあるので、技術上の問題を整理することに多くの労力がさかれ、被験動物は老年でないラットが主に使われた。本年度確認されたことは以下の4点であった。 1.イボテン酸をマイネルト核に注入することにより、アセチルコリン含有細胞を欠落させることができた。 2.前頭葉に迷走神経節を片側性に切出し、4つに細切し、移植したところ、アセチルコリン細胞が活着することが明らかになった。グラフトの細胞をアセチルコリン染色すると周囲に軸索を延ばしていることが観察された。 3.マイネルト核を両側性に破壊されたラットは一試行回避訓練成績が正常ラットより有意に悪かった。またヘブ・ウィリアムス型迷路学習をさせると、誤走行が多く、目標までの走行時間が長かった。 4.放射状迷路におけるエサ獲得方略を指標にして短期記憶の保持をテストしたが、マイネルト核破壊ラットは障害が認められなかった。 5.今後はこれらの結果が老令ラットにおいても認められるか検討する。
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