研究概要 |
本研究は、自己知識の情報処理を研究の基本的枠組みとして、社会的認知において重要なモジュ-ルと考えられる対人知覚、対人記憶、表情認知とどのように関連しているのかを実験的に検討し、社会的認知における新しい理論構築を目指すことを目的としていた。 表情認知の分野においては、顔面表情のカテゴリ-化のための視覚的情報次元を、数量化する試みをさらに進め、特定の感情状態の特徴をより明確にすることができた。また、表情認知に関連しては、典型性効果を認知的処理時間から検討し、表情認知における情報処理過程を検討した。 記憶の分野においては、自己生成パラダイム(selfーgeneration paradigm)による自己関連づけ効果の検討を行った結果、ネットワ-ク理論(e.g.,Anderson,1983)による説明が可能となることが明らかにされた。さらに、感情が自己関連づけ効果に大きく寄与することが確認され、特に好き、嫌い、という肯定的な感情と否定的な感情によって自己生成される(selfーgenerated)人物名では、その活性化の閾値が異なること、さらに、肯定的な感情を伴って生成される人物名は活性化の閾値が低いことが示された。 自己知識の分野においては、自己知識がどのように表象されているかを明確にするために、多面的自己の視点からの実験を行い、多面的な属性を自己に帰属させる傾向が見いだされた。さらに、自己の感情と関連して、自己の動機的側面が自己知識の形成にどのような影響を与えるかに付いて、理論的検討を行った。 最後にこれら研究を総括するモデルとして、ネットワ-クモデルAnderson(1983)の有効性を検討した。
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