今年度は、(1)基本的睡眠生活習慣(睡眠時間、睡眠障害の有無など)を評価するための点字による調査紙を作成し、(2)視覚障害者を対象にこの点字式睡眠生活習慣調査および面接を実施し、睡眠時間、睡眠ー覚醒リズムの乱れや睡眠障害の発生などを把握する、(3)睡眠構造を客観的・量的に評価するため、日常生活場面で終夜睡眠ポリグラフ記録(脳波、筋電図、眼球運動)を行い、視覚障害の程度、失明経過年数、睡眠の主観的評価と以上の睡眠に関する生理指標との関連性を調べること、さらに、健常晴眼者の睡眠構造と比較し、両者の類似点・相違点を明かにし、視覚障害者にとってよりよい睡眠経過をもたらす要因の同定を行った。現在までに、日常生活場面で睡眠状態を記録・観察するシステムを構成した。これは、脳波、心電図などの生理指標の電位変動を、FM変調方式により送信機から受信機に送信し、小型カセットテ-プに記録した後、実験室にテ-プを持ち帰り脳波計によって再生・記録するものである。大学生2名を対象に自宅にて試験的記録を行った結果、実験室にて脳波計で記録するのと同様の記録・再生が可能であることが確かめられた。続いて、このシステムを用い、3名の視覚障害者を対象に、3夜連続の終夜睡眠ポリグラフ記録を訓練施設内のベッドサイドで実施した。その結果、このシステムによる訓練施設内での記録が十分に可能であり、今後の実験に適用できることが確かめられた。また、3名の睡眠ポリグラフデ-タを分析した結果、深睡眠である徐波睡眠の出現量が健康晴眼者に比べ、低い値を示した。研究目的の(1)及び(2)は現在尚進行中である。(3)についてもこの計画を来年度も引続き行い、被験者数をさらに増やす計画である。
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