今年度の研究の過程で顕著に抽出された事象は、以下のとうりである。この発見を基礎にして本調査研究の基本的枠組みの再構築を計った。 例えば労働時間短縮に焦点を合わせてみる時、労働時間短縮を実現するために労働省を初めとする各関係機関および連合等の労働組合およびその傘下の企業別組合、さらには経営者団体や個別企業などが運動を進めている。その場合、時短推進運動の対象領域が明確に分化されていることが明かになった。 旧西ドイツでは労働条件改善の一つである時間短縮は、労働行政と労働組合によって主に推進されているが、労働行政は制度づくり、枠づくりを担当し、産業レベルの時短推進運動は労働組合が主に担当している。運動対象も雇用労働が行われている全域を両者が何当している。 それにたいして日本では時短推進運動は、全雇用労働者の約三割に当たる労働組合が組織されている領域には連合やその傘下の労働組合が担当し、それ以外の主に中小零細企業を含む労働組合未組織の領域には地方の労働行政機関およびその委託者が担当していることが明かになった。つまり日本では労働行政と労働組合が現場レベルでその活動領域を分け合っているという現実である。 なぜ両国間にこのような差異ができたのかを究明する時に、労働組合の組織過程、構造と機能の差異によるところが大きいのではないかという次なる疑問が提起されえた。 次年度には労働組合の日独比較の視点をふまえて、本質的な差異を考察する予定である。
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