一連の調査研究を通じて、日本とドイツの労働組合は社会的機能面、つまり社会的役割、社会的使命の面で比較が不可能であることが一層明確になった。またそのこととの関連性および両国の労働行政の歴史的経過からして日本とドイツの労働行政は社会的機能面で比較が不可能であつことも明かになった。つまりドイツの労働組合が地域および産業レベルに核組識ないしは基礎組識を有するので労働組合の社会的性格が根本的に異なることに起因している.労働問題の解決には、社会レベル(マクロ)で解決しなければならないことと、企業などの個別の組織の中(ミクロ)で解決しなければならないことに区分できる。しかもそれらはおおむね有機的連関をもって解決されなければならない。ミクロレベルの労働問題解決の主役は日本では企業別組合であり、ドイツではBetriebsratである。日本の勤労者の三分の一は、労働組合による問題解決の恩恵に浴している。しかし残りの三分の二の勤労者は労働行政(行政指導)によって労働問題の解決がはかられるか、もしくは全く問題解決が計られないまま放置される。ドイツではBetriebsratが8割以上の勤労者の問題解決を計っている。また労働組合はBetriebsratの活動にたいして、コンサルティングをしたり、直接労働問題の解決のために企業内に介入することもある。マクロレベルの労働問題解決の日本の主役は労働行政である。立法および行政指導により、基本的な労働問題の解決を計っている。特に労働組合の影響ないし保護を受けられない未組織の勤労者は労働行政が直接的に、組織労働者には間接的に問題解決に関与している。ドイツでは労働行政と労働組合が関与する対象領域が重複していて、労働行政は基本的枠組み作り、労働組合は具体的問題解決を計る業務を担当している。
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