組織個体群生態学モデルを全体社会の変動の分析と結びつけるための理論的検討をおこなった。まず、聞き込み調査と、各地の工場・企業名簿のバックナンバ-をもとにして、組織生存時間の継時的なデ-タを神奈川県をはじめとする6道県について作成した。そのうち、神奈川県のデ-タを中心にしたコンピュ-タ解析を通じて、その特徴の把握につとめた。 その結果、日本の工場組織をとりあげる場合は従来個体群生態学モデルの前提として考えられてきた業種の不変性については大きな修正をする必要があること、が明らかになった。また、個体群生態学モデルにおける基本的な概念として、組織がそのままの状態でい続けようとする「構造的慣性」の概念があるが、デ-タ分析を通じて、この概念に関して、 1.組織環境が不安定な場合には構造的慣性に対する組織年令の効果があらわれるが、安定的な場合には組織年令の効果がみられない。 2.組織の業種などについては構造的慣性が組織年令とともに増大するが、従業員規模や資本規模については組織年令と構造的慣性の強弱との間に関係がみられない。 3.組織戦略の変更の有無にかかわらず、組織創立時の組織属性の状態が強く環境適応の成否を決定する。などの知見を得た。
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