中軽度精神遅滞児・者(10〜21歳、中・高生が主)51名及び健常成人11名を対象に、(1)バランス(平均台歩き、片足立ち)、(2)視運動性眼振、(3)前庭動眼反射の測定を行ない、精神遅滞児・者のバランスと眼球運動機能との関連を検討した。その結果、以下のことが明らかになった。 1.4種のスピ-ド(20度/秒、40度/秒、60度/秒、80度/秒)で測定した視運動性眼振の測定から、精神遅滞児・者では一般に視覚刺激に対する眼振の生起率がきわめて低いことが明らかになった。 2.3種の頻度(0.25Hz、0.35Hz、0.5Hz)で行なった前庭動眼反射の測定から、精神遅滞児・者では一般に滑らかな眼球運動が生じていないことがわかった。 3.平均台歩き及び片足立ちのバランスの成績と視運動性眼振の生起率、前庭動眼反射の出現様相との関連を調べたところ、一般にいずれの眼球運動とも合目的的に生じている者ほどバランスの成績が高いという傾向が見られた。 4.しかし、より詳細な検討を加えると、視覚性の眼球運動である視運動性眼振が高率に生じている者の場合、前庭動眼反射が円滑に生じていなくともバランスの成績が高かった。一方、前庭動眼反射が円滑に生じていても、視運動性眼振の生起率が低い者の場合にはバランスの成績は低かった。
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