研究概要 |
本研究は、精神遅滞児・者のバランス障害の実態及び障害の要因を明らかにし、要因に応じたバランスの改善指導法を開発することを目的として行われた。 1.精神遅滞児・者のバランス障害の様相には、3タイプあることが重度から軽度にわたる精神遅滞学童及び成人192名を対象として,平均台歩き(動的バランス),片足立ち(静的バランス)の測定を行った結果わかった。すなわち,動的バランスの成績も静的バランスの成績も著しく低いX群、動的バランスの成績に比較して静的バランスの成績が著しく低いS群、静的バランスの成績に比較して動的バランスの成績が著しく低いD群の3つである。 2.行動調整能力とバランスとの関連を、motor impersistence testにより検討したところ、S群のバランス障害の要因として行動調整能力の障害があることが確かめられた。そして、これらの者では、直観的に行動を方向づけ、調整する物が存在する状況の中でバランスの改善指導を行うことが有効であることが、台上片足立ちの測定から示された。 3.反射(反応)系の障害とバランスの関連を、筋緊張、跳び直り反応、傾斜反応などの平衡反応をとり上げて調べたところ、動的バランス、静的バランスのいずれもきわめて低いX群は反射(反応)系に軽微な障害を有する者であることが示された。そして、この群に属する者たちのバランス改善のためには,特別にその運動量を増やす働きかけが必要であることが、万歩計を用いた日常活動量の測定から示唆された。 4.眼球運動、立位姿勢の調整に視覚情報をどう利用しているかを身体重心動揺測定により調べたところ、X群、D群はこうした視覚機能に問題を有するものであることがわかった。これらの者には視覚の定位機能を高めることが必要であると考えられた。
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