研究概要 |
前年度にひきつづき、4月から7月にかけて、日本、西ドイツ,イギリスの専門家の知見を参照にして,アメリカの事実を中心に,青年期教育における教師の権威の存立根拠およびその喪失過程をとらえるための暫定的な枠組をつくるための意見交換を行う。 それに並行して,それまでに収集した文献資料に目を通し教師の権威の変化についての巨視的素描にどれだけ使えるかの見当をつけようと努める。 6月には森田伸子“近代教育思想における文化的媒介者としての家庭教師",11月には小林亜子“近代の道徳科の教師養成とその権威をめぐって",12月には寺崎弘昭“子殺し判例を中心に近代の親の責任と権威について"等の研究会を開き、問題の周辺への視野を広げた。 11月から12月にかけて宮澤が再度,九州大学,広島大学,同志社大学などにでかけて,文献調査および関連した分野の専門家との間で意見交換を行った。 昨年度着目した,学校による社会階層の文化的再生産に関する理論の延長上にある,Havgreaves,D.の学校文化と教師生徒関係についての実証的研究にもとづく理論仮説は,歴史的変化にどこまで適用できるかを検討しつつあるが,それに加えて、1950年代に提起された,D.リ-スマンの,「内部指向型」から「他人指向型」への人間類型の変化に関する仮説的シェ-マを再検討する必要を感じた。リ-スマンのシェ-マには世代間関係の近代における変化を巨視的にとらえるために有効な示唆が含まれていると思うし,マス・メディアの役割に対する有益な指摘もある。
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