今年度の研究は、主にひとりひとりの子どもの学習過程に含まれ、あるいは関与している授業諸要因の抽出とその関係のある方(関連構造)の検討をおこなった。その研究により、次の成果を得た。 1・授業諸要因による児童の個別性の検討 前年度実施した研究授業(小学校6年図工「レリ-フ」、愛知県新城市立新城小学校、授業者:杉浦徹教諭)の過程に介在する要因の数や種類、また、それらの要因の関連のあり方に着目し、児童の個別性を3人の子どもについての事例分析を通して、明らかにしようと試みた(第39回中部教育学会で発表)。 2・「見通し」という要因を中心とする関連構造の作成 私たちは「見通し」という要因を中心に、それと関連する要因を抽出し、その関連のあり方を検討した。特くに、3人の子どもに関して詳しい事例分析をおこなった。私たちは「見通し」を「なんとかできそうだという心の動きないし感覚」であると考えている。この見通しという要因は自信を中心とした授業の理論的構造を構成するときに媒介項として設定した要因であり、また子どもが学習をすすめるうえでの中核的要因である。 3・個々の児童の授業過程に見る授業諸要因と授業場面の授業諸要因の接合 現在、私たちは、子どもの制作活動を含む全ての過程を分節化し、それらの分節にどのような要因が含みこまれあるいは介在しているのかを、幾人かの子どもの制作過程を中心に、検討している。次に、いくつかの要因が緊密に関連している分節を取り上げ、それぞれの子どもの制作過程に介在している要因の共通性、関連性を検討し、授業過程における授業諸要因の関連構造を全体的に構成できるという展望を持っている。
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