本研究の課題は、教授理論に含まれる諸概念の関連構造と子どもの経験や直観。教師の指示といった授業展開に含み込まれる授業諸要因の関連構造を相互に照応させて、授業の理論的モデルを構造することであるが、その過程で、以下のような成果と残された問題を明らかにしてきた。 1・授業の理論的構造の構成について、私たちは、「自信」という要因を中心にした「授業の理論的構造」を構成してきた。しかし、私たちは、現実の授業過程に関する計画案を作成できる程度にまで「授業の理論的構造」を構成する仕事を展開しなければならないと考えている。 2・二要因の間の媒介要因の設定が、いくつかの要因を関係づけ、関連構造を構成する場合の重要な鍵を握っている。私たちは「見通し」という要因を媒介項として設定し、授業に含みこまれ、あるいは関与している要因の関連構造を明かにした。 3・要因のレベルの区分について、私たちは、a)素材などのような事物や活動をしめすレベル、b)直観、推論といったあるまとまりのある精神活動を示すレベル、c)自信などのように観察の困難なレベル、にさしあたり区分してきた。しかし、現在、私たちは授業の経過とともに諸要因の関連のあり方が複雑に関連し、同じ要因名でも単元展開の初期と後期では他の要因との関係のレベルが違うことに注目している。このような要因の発展という観点から要因のレベルを区分する必要も感じている 4・私たちは、単元展開の全過程を分節化し、その分節ごとに個々の児童の表現活動にみられる授業諸要因のあり方を検討しつつある。そして、授業諸要因が緊密に関連している分節を取り上げ、その授業場面における関連構造と個々の児童の表現活動にみられる授業諸要因とを接合することによって、授業の構造をより全体的に解明できる、という見通しを持っている。
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