本年度は3年計画の1年目として、高校中退を巡る文献情報の収集、高校教育関係者への面接調査、高校1・2年生を対象とした予備調査、中退率の比較的高い都県、低い県の関係者への調査を実施した。 高校教育関係者への面接においては、高校入学以前の状態として相対的低学力、不本意受験、通学への意欲の低さ、入学後はクラブ活動の非参加、校内友人の少なさ、学校外との諸関係(友人やアルバイトなど)の強いこと等が、過去に中退した生徒に顕著な傾向として指摘された。また、大阪府下の高校生への予備調査の結果からは、勉学、クラブ、教科外活動への姿勢が個人レベルにおいて同様の傾向を示し、学校への高い帰属意識やそこでの自己実現感が、全体として学校への積極的態度を規定することが明らかとなった。一方、学校での諸活動に対する意欲の低さ、継続的努力志向の低さ、高い機会待望的傾向の見られる生徒においては、非通学的傾向が明らかであった。 したがって中退は、これら非通学的な態度の集中的表現として発現することが予想されるが、今回の調査では、中退の原因を特定要因に帰結させることに問題が残っている。この点をさらに解明するために、予想される中退パタ-ンを仮説的に設定した調査票の改善の検討、今年度調査対象となった1年生に対する継時的調査などが次年度の課題として必要である。
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