本年度は、最終年度として、以下の調査・分析を進め、暫定的総括を行った。まず、過去2年間に実施した調査の概要を整理し、そこで問題となった「中退者像」把握に関って、先に仮説的に提示した高校生の意識構造についてのモデルの再検討を進めた。そこでは、高校生の意識に影響を及ぼすと考えられる自己評価意識と、彼らの認識する友人関係を中心に考察した。 次に、入学当初の調査によって中退する可能性があると考えられたものにも関わらず、その後1年間には退学しなかった、「潜在的中退者」について検討を加えた。それは、彼らをいかに定義するか、また彼らの意識的特性の変容をいかに仮説し、これを実証するかが問題となった。これに対しては、多変量解析の手法を用いて、中退群、潜在群の3グル-プに便宜的に区分し、各群を判別するカテゴリ-の探索を進めた。 これらの考察と分析を通じて、、従来前提とされていた像とは異なった中退者像を抽出することができたが、それは全体として曖昧であり、高度に妥当な指標を発見しえたわけではない。このことは、より計画された調査表を作成することによって解決できる部分のあることを予想できるが、他方、中退群の識別そのものがどの程度可能なのかについて、再検討すべきことも確かである。つまり、彼らの意識特性が彼らの置かれている環境との関連でいかに規定されているかの分析を欠いては、総体としての中退者像を確定することができず、その意味で、彼らの学校生活を中心とする実態の把握が課題とされている。
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