第一回合同研究会(平成元年7月1日)における研究代表者の基調報告は、フランス本国およびわが国での従来の革命期公教育の研究を総括し、革命200年の画期にあたり、研究の方向を展望しようとしたものであった。そこでは、近代公教育の創出ないしは展開の過程を、公教育をめぐる国家と市民的公共性の対決、前者による後者の吸収、解体のそれとして把えることの可能性について提案された。なお、この報告の全文は、『西洋教育史研究』第18号(平成元年10月)に掲載された。ついで、第2回の合同研究会(平成元年12月2日)では、所期の計画にしたがって、国別に編成された部会毎に、基調報告をふまえ、さらに各々の本国等における市民革命期公教育の研究水準把握にもとづいて、全30数名による共同研究・役割分担の具体的な見通しを探った。第3回合同研究会(平成2年3月20日および21日)では、ドイツおよびイギリス本国、さらにフランス革命200年にちなんだ教育史研究をめぐる最新の動向が、3件の研究報告によって伝えられ、それに関する討議を通して、上述の研究代表者基調報告を骨格とする、近代公教育史を横断的に把える共通の認識を確認することができた。ひきつづいて行われた各部会毎の討議では、論文執筆の経過を中心とした研究計画の推進方法がにつめられたが、この作業は、リスト作成と併行して進めている図書等の備品の購入によって、さらに加速されるものと思われる。図書の購入とともに、さらに主要資料のマイクロフィルムによる採集作業も開始できる状態にあり、明年度上半期におおむねこれらの段階を経て、下半期における最終報告の論文集作成の態勢を固めることになる。
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