近年の近代革命史研究の一般的な動向を参照しつつ、近代社会の形成過程における近代公教育の史的展開のモデルを把握することを目的として、本年度の研究は、以下の目標を設定し、その遂行に全力を傾注してきた。(1)研究代表者、分担者、それに協力者が英、米、独、仏の各国別および一般的な研究動向に関する研究成果を報告し、横断的なモデル化の可能性を探る。(2)その成果を中心に報告書を作成、頒布する。(1)については、本年度は2回の合同研究会を行ない、ドイツ2件、フランス2件、イギリス2件、アメリカ1件の報告をうけた。それを承けた討論は、前年度に検討の柱として確認されている「市民的公共性」と国家との拮抗のなかでそれをとらえる可能性を追求すると同時に、新たな課題として公教育の展開の具体相を、代表的な実践や政策の場面において把握することの必要性、さらに日本の近代公教育の歴史研究の水準把握の必要性を確認するものとなった。前年度より収集した豊富な文献資料を利用したこのような検討の成果は、本年度をもって終了するにあたって刊行を予定している「報告書」において公表されるはずである。総論、一般1編、国別では英、米、独、仏各1〜4編程度の、合同研究会の討論を踏まえた内容は、フランス革命期を中心対象としつつも、国別の広がりだけでなく時期的にもスパンを広げて、イギリスのパブリック・スク-ルの制度的成立、ドイツのナチス期における統一学校思想の展開など、従来の公教育史の研究範畴では充分収まらなかった関心も対象化されている。なお、この研究の一応の終結を機に、歴史学、法学、さらに日本教育史の研究者の協力を得て、総合的な研究のさらなる発展を期すべく、新たな出発点を構想している。
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