研究課題
これまで2年間の研究計画は環境の異なる3つの地域を中心に集中的なフィールドワークを実施し、得られた資料に基ずいて当該地域の住民の環境イメージを抽出しその比較をおこなうことにあった。3つの地域とは沖縄県八重山諸島・北秋田地域及び瀬戸内沿岸の溜池集中地域であるが、それぞれ珊瑚礁・ブナ林・溜池と特異な環境条件を持った地域であり、そこに生業活動を営む人々は長い歴史を通じてその環境の特異性をその生業のなかに取り込んできた。いわば環境との付き合いかたの民俗的・歴史的特徴を見出すことができた。そうした環境の特異性を民俗のなかに取り込むことによって、それが生業構造のみならず当該地域の社会・文化の様々な領域まで限定的ではあっても影響を及ぼしていることが明確になった。こうして獲得された民俗的な環境への、あるいは社会・文化への視線が逆に当該地域の自然へ逆照射されることによって、まわりの環境がより身近かな、手を加えることのできる自然へ変容をとげていく。環境の民俗的認識はその地域の風土となって固定化される。このことを詳細に記述することによって各地域の風土感の相違を具体的に提示できる予測をもっている。それを述べるだけの具体的なデータは収集することができたわけであるが、3年目には各地域の研究を分担したもののデータをもちより3地域の環境イメージの共通性と異質性を整理していくつもりである。それによって日本の風土といった画一的な理解ではない多様な日本の風土の実体を提示できると考える。
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