〔現地調査〕平成元年度の計画に沿って、鹿児島県指宿市ハシムレ遺跡、高知県中村市中筋川流域遺跡について、現地調査を行った。前者に就いては、貞観14年噴出の開聞岳の降下物を載せた遺跡であるが、この降下物によって遺跡・遺構がどのように破壊されているかを検討した。火山降下物による遺跡破壊の問題は、熱泥流や土石流等と違って確認の判断が極めて困難であることを認識した。後者は、中世における地震にともなう液状噴砂現象により遺跡が破壊された例として報告されたものであるが、検討の結果、地震破壊の問題は、地震の年代の決定・表層構造の問題、また地形的な問題などとも絡みあって、複雑な現象を呈していることを確認した。それゆえ、報告書に記載される遺跡の自然破壊の状況も、当然のことながら、現地踏査を行わねば具体的にその内容を明らかにすることができない。 遺跡破壊の要因の一つに、重力による遺物移動の問題がある。この問題を具体的に解決する為に、茨城県行方郡麻生町於下貝塚(縄文時代中期〜後期)で発掘調査を行い、斜面に形成された貝層がどのように変化したかについて、詳細な研究を進めた。今までの観察結果に基づくと、貝層が放棄された下層に、基盤のロ-ム層や第三紀層のブロックが混入し、貝層が形成されている急崖の成立が、完新世の海進期に行われた波蝕作用と関係し、その成立直後に貝層の形成が始まったとする手がかりを得ている。それゆえ、貝層・遺物が重力によって斜面移動したという説明が可能である。現在、出土遺物を中心に検討中である。 〔資料収集〕奈良国立分化財研究所に収蔵されている発掘報告書をもとに、自然破壊を伴った遺跡について、情報を収集し、遺跡を破壊した各種自然要因について分類を行っている。
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