研究概要 |
わが国各地の遺跡から出土する貿易陶磁器の状況を、全国規模で把握するために文献目録(発掘調査報告書等)の作成を目的とした。今年度は次の2点に重点をおき研究をすすめた。すなわち、 1.東日本地区の出土陶磁器について調査し、文献目録を作成すること。 これについて、まず北海道東部にる貿易陶磁器分布の北限について調査をおこない、釧路市とその周辺部で少数ながら明代青花磁器を検出していることが判明し、また宋代の湖州鏡も出土しており、13世紀代以降には、この地域に唐物が受容されていたことが証明された。つぎに、東北地方の主要な古代官衛跡から出土する中国陶磁器について調査した。このなかで、胆沢城跡出土の越州窯青磁類はすべてに公表されているが、今回再度出土遺物を検討してみると、新に5片以上があることが判明した。さらに平成2年秋、陸奥国府推定地の発掘調査がおこなわれ、陶磁器について調べると、数点の初期貿易陶磁器(越磁,〓州白磁)が含まれていることがわかり、東北地方に、平安時代前期に相当量の中国陶磁がもたらされていたことを確認した。これらの調査を含めて、東日本の文献目録の作成をおこなった。 2.西日本地域のうち、福岡市博多遺跡群出土の陶磁器が質量ともに豊富であり、文献目録作成上に必須の資料となるので、とくに調査の重点をおいた。幸い福岡市教育委員会の協力をえて、博多遺跡群第36次,37次、58次の各調査出土陶磁器の全資料を整理した。その結果、結州窯青磁については従来の編年観を修正することができた。さらに、平安時代後半以降の貿易陶磁の中心を占める竜泉窯青磁について、とくにその草創期の製品について、博多出土品を中心にして研究をおこなった。これら2件について.各々論文の形で成果を発表した。いずれも文献目録目成上の基礎的部分を構成するものである。
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