19世紀後半から20世紀にかけての貴重な口語資料として、SPレコ-ドに記録されたレコ-ド資料群がある。落語SPレコ-ドに残された音声を利用しての国語学的研究としては、すでに清水康行氏による、主に東京語の音声的特徴についての多くの論考がある。しかしながら、東京落語の量には及ばないものの、少なからぬ数が残されている大阪落語のSPレコ-ド資料については、国語学、方言学の立場からのアプロ-チは、これまでまったくと言っていいほど行なわれていないのが現状である。 本研究では、各地に所蔵されている大阪口語の資料を収集し、それらを分析することによって、当時の大阪口語の実態を明らかにすることを目的とした。また、現在の関西ことばの動態をめぐってのフィ-ルドワ-クの結果とつきあわせることによって、上方口語の変遷の様相を総合的に解明することをめざした。 本年度は、成果の報告書として、大阪落語SPレコ-ドを聴取し分析した録音文字化資料集(『20世紀初頭大阪口語の実態ー落語SPレコ-ドを資料としてー』)を作成した。また、滋賀県彦根市から岐阜県岐阜市にかけて実施した各年層男女を対象としたフィ-ルドワ-クの結果をまとめたグロットグラム集(『彦根一岐阜間グロットグラム調査報告書』)を作成した。
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