研究課題/領域番号 |
01450070
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研究種目 |
一般研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
独語・独文学
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
轡田 收 学習院大学, 文学部, 教授 (90051325)
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研究分担者 |
川口 洋 学習院大学, 文学部, 教授 (60080412)
村田 経和 学習院大学, 文学部, 教授 (10080417)
早川 東三 学習院大学, 文学部, 教授 (00080416)
岩淵 達治 学習院大学, 文学部, 教授 (40080410)
橋本 郁雄 学習院大学, 文学部, 教授 (90080415)
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研究期間 (年度) |
1989 – 1991
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キーワード | ドイツ世紀末文化 / 文化受容 / ワイマール文化 / ナチズム / 大衆文化 |
研究概要 |
本研究の目的は、第二帝政期ドイツにおける近代化の特性を文化の諸局面の現象を検証することによって明らかにすることであった。第二帝政期においてドイツはめざましい勢いで制度上の近代化をすすめ、経済的・政治的にはかつてない繁栄を経験した。だが、その一方で近代化の歪みが生活・文化の面で一気に吹き出した時期でもある。この歪みは、ハーバーマスの用語で表現すれば、「システムと生活世界における非同時的な近代化の進行」と規定することができる。こうした非同時性にもとづく近代化の歪みはドイツのみならず、近代化の過程一般に確認できる現象であるが、ドイツにおいてはこの近代化の矛盾が他のヨーロッパの国々(フランス、イギリス)とくらべて顕著であった。それは社会学者ヘルムート・プレスナーの言うようにドイツでは市民階級の形成が遅く、また不完全であり「遅れてきた国民」として近代化に着手したためである。本研究では、システムと生活世界における近代化の非同時性が、ドイツにおいては前近代的政治形態としてのナチスを招来した原因であるとの確信に基づき、1)近代化に伴う制度化とアウトサイダー文化の成立、2)知の制度化の諸影響(大学教育、言語教育を通じた国民意識の醸成など)、3)遅れた近代化がナチスへと帰結する「ドイツの特殊な道」(歴史家ヴェーラーの表現)の分析に重点を置き、その際にS.クラカウァーが定式化しE.ブロッホが発展させた概念である「非同時的なるものの同時性」をキーワードとした。研究の結果、「同時性」の観点から近代化の様々な病理現象がヨーロッパ市民社会共通の問題であることが認識され、「非同時性」の観点からは、日本と同様に遅れて近代化を行ったドイツ社会の特殊性が特定化された。またこの特殊性こそが、ドイツにおいては近代化と合理化を全面的に否定しようとする前近代的・全体主義的なファシズム政権を生み出す原因となったことが確認された。
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