未成年層の政治的成熟過程についての研究は、学界においてもその対象・内容・方法において充分に確立されているとは言いがたい。特にわが国においては教育をめぐるさまざまな論点が政治化していることもあって、基礎データの蓄積が著しく遅れていることが、研究を困難にしている一因である。3年計画で進められた本研究プロジェクトは、繰返し実施することに耐えられ、かつ、国際比較が可能となるような質問票を作成すること、研究分担者である法政大学法学部岡村忠夫教授が1968年にわが国で実施した調査と、比較可能であること、内外に公開できる基礎的データを収集することを目指した。 第1年次と第3年次には、日本国内4地区(東京都山の手地区、札幌市圏、北海道北部の小都市、和歌山県紀北地方)で、小学校・中学校・高等学校の協力の下にアンケート調査を実施した。調査の対象とされたのは、小学校3年生から高校3年生までの10学年である。第2年次には、これら調査対象者にグループインタビューを行い、調査票によるデータで得ることの難しい質的データを集積した。これにより、第1年次の調査で用いられた質問票に小規模の修正と追加を行い、アメリカ合衆国内での調査票の英語表現を確定することが可能となった。これらのデータから、わが国における未成年層に形成されている政治的認識のパターンが、20年前と比較して規定的な部分では大きく変わっていないこと、しかし、政治に対する信頼感、政治家の評価、政治的権威像の形成、政治的権威に対する愛着・認識・評価などの態度、などの多くの側面で、政治不信や政治的な無力感と言うべき意識の形成が、20年前より低年齢化してきていることが明らかになった。 また、アメリカ国内でも本研究を移植した調査が行われ、日米の比較分析の共著論文を1992年度アメリカ中西部政治学会で発表した。
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