研究概要 |
本研究プロジェクトでは、最近の景気循環理論の展開を展望しつつ、日本の経済変動を実証的に分析した。分析の焦点は、(1)物価の変動と実物経済の安定性,(2)賃金率の変動,(3)貨幣供給と実物経済の関係,および(4)国際収支の変動規定要因においた。それぞれのテ-マについて得られた結論を要約すれば次のとおりである。 (1)については、価格の伸縮性が実体経済のショックを吸収し、その変動を和らげるという命題に対し、最近種々反論も出ているが、日本・米国の100年間のデ-タを用いた時系列分析の結果、元来の命題を支持する結果が得られた。 (2)については、日本の労働市場が新規学卒者市場が競争的・伸縮的で、そこでさまざまな実物的ショックが吸収されるとの命題が広く受け入れられてきたが、産業別コ-ホ-トデ-タのくわしい分析の結果、1970年代半ば以降の低成長期には下方硬直性と同様の性質が発見され、従来の仮説に反する結果が得られた。 (3)については、日本の貨幣供給と実物指標との間の時系列的分析の結果,前者が後者の変動に対応してなされる(accommodateする)部分の大きいことを示し、従来のマネタリスト的見解(後者は前者によって規定される)と反対の結果を得た。 (4)については、日本・英国・米国の戦前・戦後の長期的デ-タの比較検討より、各国の大幅な国際収支不均衡をもたらす理由として、軍事費の増減を反映した財政の動きという短期的・一時的要因と、国際的な投資機会の散らばりを反映した長期的資金移動に求められること、最近の不均衡は軍事費の増減によらない新しい性格のものであることを示した。
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