本研究の目的は土地と株式の価格形成メカニズムを統一的に解明し、現在の土地問題や株式価格の不安定性のひきおこす問題の是正に必要な政策を提言することにある。特に、税制と規制が土地市場と株式市場に与える効果とその問題点を明らかにし、その改善の方策を検討することに重点が置かれる。平成元年度の研究成果は以下の通りである。 固定資産税、法人税、譲渡所得税、相続税等の税制が地価に与える効果を理論的に分析し、それらの効果の大小を左右する要因を検討した。主要な結果としては、都市近郊農地のように現状で低度利用されている土地については、譲渡所得税のロック・イン効果は大きくないことや、一般的な固定資産税の強化が宅地供給に与える効果は大きくないことが示された。これらの結果は、「土地税制の宅地供給阻害効果と地価」(『日本の株価・地価』所収)(金本良嗣)と題する論文にまとめられている。 日本の地価の長期的な動向を分析し、昭和30年代後半から昭和60年までは、ファンダメンタルズのアプロ-チで現実の地価をかなりよくとらえることができるが、昭和61年から63年までの地価高騰はそうではないことが示された。そこで、非ファンダメンタルズのアプロ-チのうちで、合理的バブル、予測の無限連鎖とケインズの美人投票、投資家の持つ情報の不十分性、投資家の貨幣錯覚を取り上げ、これらのモデルで61-63年の地価動向が説明できるかどうかを検討した。その結果、これらのモデルは単独では61-63年の地価高騰を説明できないが、4つのモデルを組合せるならば可能であることが示された。これらの結果は、「日本の地価決定メカニズム」(『日本の株価・地価』所收)(西村清彦)と題する論文にまとめた。
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