本研究計画最後の年なので、補充調査とまとめの作業をおもにおこなった。 県のマスタ-プラン「沖縄トロピカルリゾ-ト構想」は、全容がほぼ明かとなり、まずその評価をめぐる検討をおこなった。補充調査として、先島方面における開発計画及び基礎資料を自治体担当者から提供してもらい、地元参加体制についてのヒヤリングも実施した。また、既存の共同事業として行われている宿泊事業、伝統工芸(織物、ガラス工芸等)分野について、該当の担当者と協力員の援助で経営実態や計画に関する調査を実施した。 全体的開発プランからすると、宿泊施設、ゴルフ場、海洋レジャ-施設等は、相当程度の充足が見込まれる。しかしそれにともなう環境問題や地域振興との接点は、プラン段階では充分検討されていない状況がある。自治体の役割として、民間ベ-スの開発を調整し、住民との合意形成を進めることがあげられるが、その点での取り組みが不充分なようである。しかし、そのいっぽうで宿泊業や伝統工芸分野で、共同化=協同化を手段として産業化を図り、ある程度軌道に乗っているケ-スも明かとなった。また、観光・リゾ-ト開発を地域社会に根ざしたスタイルで考えている若いリ-ダ-が育ってきており、彼らの役割が今後ますます重要となってきていることを調査過程で認識しえた。 地域文化や地場産業と融合しつつ、人間的ふれあいの場として観光・リゾ-ト形成を進める方法、自治体の役割、大手資本との「住み分け」の論理等に関し、沖縄的アイデンティティ-を生かした方向性を、ある程度成果としてまとめることができた。今後、これらの方法論と実態面での具体的課題を、ケ-ススタディとして共同研究のスタッフがさらに深めることが期待される。
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