リゾ-ト地としての沖縄の可能性を、地域社会の経済的文化的振興と結合させて検討しようとした。方法的には、地元の中小資本や自営業者のリゾ-ト経営・観光産業への参加を促進する立場より、「共同化」による組織化を重視した。構成として、「リゾ-ト法」を根拠とした沖縄県の「トロピカルリゾ-ト構想」の概要を把握した上で、沖縄観光やリゾ-ト開発の推移と現状、観光関連産業における中小経営組織化の現状と問題点、今後の課題等を指摘したものとなっている。各構成部分で指摘されている要点としては、まず「トロピカルリゾ-ト構想」については、「国民余暇時代における新しいライフスタイル」の場を提供をめざしているが、全県が対象地域であり、先進地域である恩納村の現状が示している地価高騰、赤土流出、基盤整備資本不足、水不足等の問題が、今後、全県的に問われざるをえない。沖縄観光の現状からみた場合、特に集客力のない県内小規模宿泊業者の低落が、マ-ケティング上の課題を明かにしている。リゾ-ト開発と地域との関係では、開発業者の大部分が県外資本であり、土地が復帰前後に買い占められ、しかもこの間の地価高騰によりその土地の再売却も頻発している。また、開発業者と地元自治体等との関での協定においては、より厳密な調整と、開発業者の積極的な地元への協力が不可欠になっている。共同化については、伝統工芸等の分野で一定の成果を納めているが、内部では後継者不足、外部ではリゾ-ト事業者や観光産業との有機的連繋不足等が課題となっており、主体の脆弱性を考慮すると、公的指導の強化とリ-ダ-の養成がますます重要になっているといえよう。総じて、高級志向=高額出費を余儀なくさせる「装置産業」としてのリゾ-トビジネスではなく、それぞれの地域の産業や文化、景観、人々とのふれあい等が素材として生かされ、訪れた人々に静かな感銘をもたらすような場づくりとして、観光の産業化が方向づけられるべきだという指摘に致達した。
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