本研究では、日本の自動車産業における原価計算の方法と、原価統制および原価企画の方法について、個々の自動車企業を訪問して探究した。 実際に取材した企業は、トヨタ・日産・マツダ・ダイハツ・鈴木・久保田鉄工(トラクタ-工場)などであった。得られた知見の概要は、次のとおりである。 1.原価計算については、各社ともスタンダ-ドな計算方法を採用しているが、(1)製造原価に占める各原価要素の構成比率の特徴と、それが近年の原価管理の重点の移動を生んでいること、(2)工程別の加工費配賦におけるマンアワ-・レ-トの意味、そして(3)標準原価計算の用途などが明らかになった。 2.原価統制(コストコントロ-ル)については、(1)「原価改善」としての改善活動が材料費・労務費・経費の費目別にどのように行われるのか、また(2)「JIT生産方式」が工数管理のためにどのように行われ、それが経理部の推進する原価管理といかなる関係になっているか、さらには(3)企業全体の「目標管理制度」と原価改善との結びつきはどのようになっているのか、などが明らかになった。 3.原価企画については、(1)これが重要になってきた環境的背景、(2)原価企画が利益管理の一貫として、目標利益の実現にとっていかなる位置づけになっているのか、(4)原価企画におけるプロダクト・マネジャ-の役割はいかなるものか、そして(5)原価企画の全体的なプロセスそのもの、などが明らかになった。 以上の研究に引続いて、平成2年度においては、「コンピュ-タ統合生産」(CIM)における原価管理のシステムについて、実態調査を通じて明らかにする予定である。
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