本研究は、上記の課題に対する基礎的研究として、展覧会の運営方式の特性を把握し建築計画的な示唆を得ようとしたものであり、今年度に行なった研究成果の概要は次の通りである。 1.運営方式における展示替え特性 展覧会の運営方式によって展示替えの内容にかなりの相違点が見られた。すなわち、(1)常設展は運営方式の中では最も長期的な傾向を示すが、展示規模は逆に3方式の中で最も小規模な傾向を示している点、(2)企画展の展示期間・規模は、概ね常設展と一般展の中間的な意味を持っている点、(3)一般展は週単位の短期のもので、作品規模は多様に分布している点、等である。また、これら運営方式の組合せパタ-ンを各館と対応させてみると、各運営方式が互いに影響し合っていることがわかった。 2.延展示量の構成 展示活動のストックを延展示量に補正して各館と対応させてみたが、概ね、一般展に偏っている館ほど格段に展示量が大きく、全体からも常設展より企画・一般展による展覧会活動が盛んになっていることが分かった。また、面積と展示量との関係は、必ずしも一定ではないが、展示面積が大きくなるほど展示量も多くなる傾向がある程度見られた。 3.運営方式における地域・保有・企画の特性 展示性格における(1)資料の保有度、(2)地域美術との関連性、(3)自主企画の程度をそれぞれの運営方式別、館別に考察したが、常設展・企画展・一般展は上記の3指標によってもその性格が大きく異なっていることが分かった。特に、常設展における「地域度」と、企画展における「地域度」「保有度」「企画度」は、ある一定の傾向を示すというより館の展示運営方針によって多様な変化を示している点が注目された。
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