本研究は、美術館の主たる活動である展覧会の開催に着目し、常設・企画・一般展の3展示方式が展示手法の点でどのような特徴を持つかを明らかにしたものである。得られた結果をまとめると次の通りである。 (1)新たな展示方式の分類軸として、展示替えの有無、資料の活用形態等を取り上げ、「常設記念館型」「館蔵品活用型」「館蔵品+借用品型」「借用企画型」の4つのタイプが得られた。(2)美術館の展示は、全体的に個体展示や主題展示を中心にしつつ2次資料の活用には比較的消極的であり、概要パネル類や展覧会図録等を通じて展示情報を伝達している場合が比較的多いこと、また、「ケ-ス展示」「露出展示」「折衷型展示」や補助設備等を多様に選択しているが、これらは作品の年齢・ジャンル・展示室規模等との関連性も強いこと、等の傾向が見られた。(3)これらをタイプ別にみると、「常設記念」は、総合展示・2次資料を主に活用した保存本位の恒久的な手法を使っている。(4)「館蔵活用」は、群展示、総合展示が減っている反面、他の個体・主題・分類展示が増えており、伝達方法・展示装置・補助設備ともに若干多様化している。(5)「館蔵+借用」は、配列様式・情報の伝達方法は最も多様化し、展示装置は折衷型の展示が多く、補助設備・用具の実施率は「借用企画」と類似している。(6)「借用企画」は、個体・主題展示を中心に多様な伝達方法を駆使しており、露出展示を中心にその配置構成も大幅に替わり、諸設備もやや充実している。(7)4タイプそれぞれが展示手法の実施形態においてかなりの違いを見せており、タイプ区分の妥当性は確認されたが、中では「常設記念」とと「館蔵活用」、「借用企画」と「混合」が相対的に類似している点もある程度見られ、展示手法の大きな違いは館コレクションを使うか外部資料を使うかの2つによって大別される。
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