激変星における降着円盤の不安定性の研究

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01460008
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 尾崎 洋二 東京大学, 理学部, 教授 (30011547)
• キーワード: 降着円盤 / 激変星 / 矮新星 / 不安定性 / 潮汐効果 / 数値シミュレ-ション / SU UMの型星 / レゾナンス

研究概要

激変星は、もともとは暗い星であるが、ある日突然明るく輝き出す一種の変光星である。激変星のなかでも矮新星と呼ばれる星は、数10日に一回の割合で5等級ほど明るくなる爆発を繰り返している星である。激変星は、主系列星と白色矮星のペアからなる近接連星系で、主系列星から流れ出たガスが白色矮星のまわりに降着円盤を作っている。矮新星の爆発は降着円盤が突然明るくなる現象と考えられている。本研究では激変星の爆発現象を降着円盤の不安定性により説明することを試みた。降着円盤の不安定性としては、以前から水素の電離に伴う熱不安定性があり、この熱不安定性を使うとU Gem型と呼ばれる矮新星の爆発現象がうまく説明できることが知られている。この熱不安定性以外に、降着円盤の潮汐不安定性と呼ばれる不安定性がある。本研究では、2次元流体数値シミュレ-ションと解析的研究により、この潮汐不安定性が降着円盤の流れと件星の潮汐力とのレゾナンスで起こることを明らかにした。一方、実際の天体現象としては、矮新星の一種にSU UMの型と呼ばれる星がある。この種の星では、通常の爆発のほかにス-パ-アウトバ-ストと呼ばれる特別に規模が大きい爆発がある一定の間隔で起こる。このス-パ-アウトバ-スト現象を説明するモデルを提案した。このモデルは以前から知られている降着円盤の熱不安定性とこの潮汐不安定性を組み合わせるものである。このモデルでは、通常の爆発は降着円盤の半径が小さいときに起こる熱不安定性であり、一方ス-パ-アウトバ-ストは円盤の半径が大きくて潮汐不安定性を伴う熱不安定性によって起こることが示された。

研究成果

• [文献書誌] Yoji OSAKI: "Thermal and Tidal Instabilities in Accretion Disks in Dwarf Novae" Theory of Accretion Disks(eds.F.Meyer et al.). 183-205 (1989)
• [文献書誌] Yoji OSAKI & Masahito HIROSE: "Hydrodynamic Simulation of Accretion Disks in Cataclysmic Variables" Theory of Accretion Disks(eds.F.Meyer et al.). 207-212 (1989)
• [文献書誌] Yoji OSAKI: "A Model for the Superoutburst Phenomenon of SU Ursae Majoris Stars" Publ.Astron.Soc.Japan. 41. 1005-1033 (1989)
• [文献書誌] Yoji OSAKI & Masahito HIROSE: "Hydrodynamic Simulation of Accretion Disks in Cataclysmic Variables;Superhump Phenomenon in SU Ursae Majoris Stars" Publ.Astron.Soc.Japan. 42. (1990)
• [文献書誌] Takashi SEKII & Hiromoto SHIBAHASHI: "An Asymptotic Inversion Method of Inferring the Sound Velocity Distribution in the Sun from the Spectrum of p-Mode Oscillations" Publ.Astron.Soc.Japan. 41. 311-331 (1989)
• [文献書誌] Hideyuki SAIO: "Viscous Evolution Self-Gravitating Galactic Disk with Dark Halo" Astrophys.J.(1990)
• [文献書誌] W.UNNO,Y.OSAKI,H.ANDO,H.SAIO,& H.SHIBAHASHI: "Nonradial Oscillations of Stars(Second Edition)" University of Tokyo,Press, 420 (1989)