研究概要 |
本研究課題の目的は、低温度星及び関連天体の赤外線スペクトルを観測することにより、星の進化の最終段階の過程を観測的に明かにしようとするものである。低温度星は、Asymptotic Giant Branchを経てProtoーplanetary nebulaへ、さらにはplanetary nebulaへ進化していくものと考えられているが、このような段階の天体に対する理解が観測的には進んでいない。このような段階の天体では星からの質量放出が重要な役割を果している。ガスとして放出された質量は、星から遠ざかるにつれて低温になって凝縮し固体の塵となる。こうしてできた星の周りの塵の層は、星の光で暖められて赤外線の輻射をだす。従ってこれらの天体は赤外線波長域で明るい天体となっている。 低温度星は、その大気の組成によって、Oーrich(O/C>1)、S型星(O/C〜1)、炭素星(O/C<1)の3種類に大別されているが、3種類各々が異なった成分の塵を周りに伴っているために、天体からの赤外線スペクトルも3種類の天体で異なった様子を示す。赤外線スペクトルの観測は、これらの3種類の天体の進化の最終段階の過程とこれらの星の相互の関係を明かにするのに大変重要な情報を与える。 我々は、低温度星及び関連天体を広範に、赤外波長域で測光、分光観測することにより星の進化の最終段階を明らかにすることを試みた。我々の観測は近赤外波長域の測光観測と、我々が開発を進めてきた冷却グレ-ティング分光器による波長域2〜4μmの分光観測から成る。米英蘭共同で1983年に行われたInfrared Astronomical Satellite(IRAS)による波長12,25,60,100μmの遠赤外測光観測のデ-タ及び波長8〜23μmの分光観測のデ-タと合わせて解析することにより、星周塵に厚くとり囲まれた進化の進んだ星の性質に対する理解が大きく深められた。
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