不安定核のイオントラップとレ-ザ-・マイクロ波二重共鳴法による核モ-メントの測定

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01460013
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 藤岡 學 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 教授 (70016111)
• 研究分担者: 松木 征史 大阪大学, 核物理研究センター, 助教授 (50037941) ; 八木 益男 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (10004269) ; 篠塚 勉 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 助手 (10134066)
• キーワード: イオントラップ / RFトラップ / ポ-ルトラップ / 不安定核イオン / ^<87>Sr II / 超微細相互作用定数 / 精密測定 / 質量分離装置

研究概要

前年度までに装置の概要が出来上り、レ-ザ-・マイクロ波共鳴テストに入る以前に行うべきこと、特にイオンがトラップされていることの電気的検出、及び、本実験に必要な422nmのレ-ザ-光も、KN素子を用いた第2高調波発生装置の成功により使用できる状態になっていた。
従って今年度は、装置各部分の一層の整備による完成と、最終目的である ^<87>Sr IIのとじこめと、レ-ザ-・マイクロ波2重共鳴による磁気的超微細相互作用定数Aの精密測定が残された課題であり、これは次のような経過で遂に達成することができた。
1) ^<87>Sr II( ^<87>Sr^+)のトラップへの閉じ込め。これはSr金属をトラップに接続した質量分離装置でイオン化・加速・質量分離,そしてトラップ内Ptフィラメントにイオン注入し、Ptに瞬時に通電し、表面電離法により再イオン化することにより、トラップ内に閉じ込めた。
2)レ-ザ-共鳴蛍光の検出。トラップした ^<87>Sr^+に422nmのレ-ザ-光をあて、放出される蛍光収量を検出し、周波数をスイ-プすることにより、共鳴的に光ポンピングが起っていることを確認した。
3)マイクロ波による2重共鳴の検出。上記のように光ポンプされた ^<87>Sr^+にマイクロ波をあて、その周波数をスイ-プすることにより、蛍光収量のピ-クを検出することができた。
以上のようにして、Aに対応する周波数として、V=5002.40±0.14MHzを得たが、これは従来の値V=5002.5±5.0MHzの精度を36倍改良したことを意味し、本実験が無事成功したことを示した。
但し、実験装置周囲の磁場を制御しきれず、より精度の高い値が得られなかったのは残念である。また、不安定アイソト-プ ^<89>Srについてもまだ測定を行なっていない。共に今後の課題である。

研究成果

• [文献書誌] M.Wada,H.Ikegami,T.ShinozuKa,H.Sunaoshi,M.Fujioka,M.Yagi and S.Matsuki: "Construction of an IonーTrapfor Nuclear Spectrscopy Using a LaserーMicrowave Double Resonance Method." Cyclotron and Radioisotope Center Annual Report.9. 94-98 (1989)
• [文献書誌] M.Wada,H.Sunaoshi,Y.Fukashiro,S.Hayashibe,T.Shinozuka,M.Fujioka,M.Yagi,I.Satoh,S.Matsuki: "Construction of an Ion Trap for Nuclear Spectroscopy Using a LaserーMicrowave Double Resonance Method(II)ーDetection of the LaserーInduced Fluorescence from the Trapped Ions of ^<88>Sr^+." Cyclotron and Radioisotope Center Annual Report. 10. 91-97 (1990)
• [文献書誌] M.Wada,H.Sunaoshi,Y.Fukashiro,S.Hayashibe,T.Shinozuka,M.Fujioka,M.Yagi,I.Satoh,S.Matsuki: "Construction of an IonTrap for Nuclear Spectroscopy Using a LaserーMicrowave Double Regonance Method(III)ーMeasurement of the Hyperfine Constant of ^<87>Sr^+." Cyclotron and Radioisotope Center Annual Report. 11. (1991)
• [文献書誌] M.Fujioka: "An RF Trap and Laser Spectroscopy:Detection of Fluorescence from Trapped ^<88>Sr^+." Proc.of JapanーUS Seminar on Quantum Electronic Manipulation of Atoms and Fields.1. 240-244 (1991)
• [文献書誌] M.Wada: "Construction of an RFーTrap for Nuclear Laser Spectroscopy." Proc.19th INS Internat.Symp.on Cooler Rings and Their Appl cations,ed.T.Katayama(World Scientific,Singapore). 1. 123-127 (1991)
• [文献書誌] M.Wada et al.: "Production of 421.6nm Laser Light for Nuclear Laser Spectroscopy of Trapped Strontium Ions by a FrequencyーDoubling Method." Japanese Journal of Applied physics.