研究課題
一般研究(B)
電子冷却では、イオン貯蔵リングの一定区間で電子とイオンビ-ムが合流するが、その際ある確率でイオンは電子を捕獲する。この様な電子再結合によって電荷が変換されたイオンは、リングの中心軌道から外れるので容易に観測することができる。電荷が変換されたビ-ムは電子及びイオンビ-ムに関する貴重な情報を含んでいる。従って、このようなビ-ムを詳しく調べることによって加速器の診断を行うことができる。一方電子冷却部は良質のイオンビ-ムと相対速度が零から広範囲に及ぶ電子ビ-ムとの相互作用の起る場であり、冷却装置は純粋な高密度電子標的と見なすことができる。この様な観点から冷却電子はイオン一電子相互作用という原子物理の主要テ-マの研究を可能にする。研究は三種類のイオンについて行われた。1)H^+の電子捕獲は実験的にも理論的にも良く知られているので、逆にこのことを利用して電子冷却の診断を行った。先づ中性水素原子の生成率から電子温度が約0.2evであることがわかった。又水素原子ビ-ムのサイズを測定した結果から周回ビ-ムのエミッタンスを求め、電子冷却の平衡状態では1〜2πmmmrad であることが判明した。更にバンチを形成するビ-ムの冷却によって、バンチ幅が数十nsという非常に短いバンチになっていることが観測された。2)H_2^+の電子捕獲の研究を行い、電子捕獲分解過程H_2^++e→H+Hによって生成される水素原子対を測定した。電子とH_2^+の速度が一致する場合に捕獲確率が最大になり、その幅から電子とH_2^+の交差角がわかり、更に電子のサイクロトロン運動の直径を推定することができた。3)^3He^+の電子捕獲の研究では電子が捕獲されると同時に既に^3He^+内に存在する電子が1sから2p軌道に励起されるという二電子性再結合の実験結果を始めて測定することができた。この結果は理論の予想と矛盾しない。将来は更に重い重イオンでの二電子性再結合の研究を予定している。
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