研究概要 |
本年度は以下の3テ-マについて研究を行なった。 1)Tmアイソト-プの光ポンピングによる核偏極生成。 CaF_2結晶中に,核反応で生成した ^<164>Tmを打ち込み,オンラインで光ポンピングにより核偏極を生成した。実験は大阪大学核物理研究センタ-の質量分離装置CARPを用いて行い,偏極はプラスチックシンチレ-タ-を用いて検出した。この結果約2〜4%の核偏極が得られることを確認した。 2)ヨ-ロッパ共同原子核研究機構(CERN)における質量分離器ISOLDEを用いて, ^<114>InをGaAs結晶中に埋め込み,日本に持ち帰ってオフラインで光ポンピングにより核偏極を生成した。880℃で熱処理を行なって放射線損傷を回復させた後,波長800nmの近辺の狭い領域で約2%の核偏極を確認した。また,いわゆるランダウ共鳴の効果と思われる微細な波長依存性を見い出した。同時に ^<114>Inの磁気共鳴を観測しgー定数の予備的結果を得ている。 3)理化学研究所のリングサイクロトロンを用いて, ^<33>Siを生成し,質量分離器RIPSを用いて分離した後,GaAs単結晶に埋め込んだ。光ポンピングにより ^<33>Siの核偏極を生成し,β線の非対称度分布により確認した。約1〜2%の核偏極を確認した。GaAs結晶の温度により偏極生成の可能な波長が変化する。2つの異なる温度で核偏極を生成出来る波長を得た。これらの結果は2)で得られたInの場合の波長と定性的に共通に解釈出来るものである。また予備的な ^<33>Siのgー定数の値を得た。 以上の結果より,固体内光ポンピング法が,不安定核の構造研究にとって有効であることが示された。これらの結果は論文により印刷中または発表予定である。
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