研究概要 |
我々は、本研究に先だって、大阪大学核物理研究センタ-において反跳核質量分析器を稼動させることに成功した。この装置は原子核反応で生成される不安定核をビ-ム状(二次ビ-ム)にして分離、抽出する事ができる。本研究は、この装置を更に高効率化して利用する事により、従来困難であったT_z=ー3/2, ー2核のガモフテラ-β転移確率を精度良く求める事を目標としている。このβ転移確率は核のβ崩壊及びβ遅延陽子崩壊強度から求められ、M1巨大共鳴の強度を直接的に確定するものである。M1巨大共鳴の強度は理論的予測と合致せず、近年、新しい核内粒子運動自由度を示すものとして、系統的に確定する事が強く望まれている。平成元年度においては、我々は、主として反跳核質量分析器の高効率化と最も有効な検出系の開発に研究の重点を置いた。従って、平成2年度においては、全系を組み合わて実験に対して最適化する事が先ず行われ、ついで、この系を用いて目的とする陽子過剰核の測定が行われる事となった。実験装置系の最適化の結果、陽子過剰不安定核の収量には、従来より少なくも10倍以上の増加が達成された事が実験的に判明した。また、開発した検出系と検出方式はほぼ予定した通りの性能を示し、β線及びβ遅延陽子を選択的に高いS/N比で測定する事ができた。β転移確率の測定においては、まず実験の相対的容易さからT_z=ー3/2核を対象とする事とし、 ^<13>O、 ^<21>Mg、 ^<25>Si、 ^<29>S、 ^<37>Ca, ^<41>Tiについて測定が行われた。 ^<25>Siについては既に実験デ-タの解析が完了し、M1巨大共鳴の強度は理論的期待の約60%である事が示された他、理論的に予測されないアナログ状態への強度の集中が確認された。他の核については現在解析が進行しており、いずれも初めてM1巨大共鳴強度を確定できる見込みである。この成功に勢いを得て、現在T_z=ー2核に対する実験も準備中である。
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