Ce合金はCeRu_2Si_2のように狭いfバンドがフェルミ準位付近に出来る場合(Kondo効果)の他、狭いd-バンドがフェルミ準位付近に存在する場合がある。いずれの場合も不純物効果が大きく、不純物効果はCe合金の低温物性の有効な研究手段になっている。 CeAgはCsCl型の結晶構造を持ちCeの4f電子の四重極モ-メント間相互作用によりT_Q=17.5Kで構造相転移しc/a=1.01の正方晶になる。Te=5Kで強磁性に相転移するがT_Q>TではQ=<J^2_Z-1/3J(J+1)>≠0になりC軸方向に非常に大きな磁気異方性が誘起されるためにT>Tcの常磁性状態に於いてもCeの4f電子の全角運動量Jのゆらぎは等方的でなく磁気的な短距離秩序の発達に伴いC軸方向に凍結するようになる。この効果がミュオンの緩和に観測された。Ceの磁気モニメントがC軸方向に固定されるとスピンの上向き下向きの2通りの方法で固定される。このためにミュオンサイトで内部磁場がほとんど打消されている場合と強め合うようになり非常に大きくなる場合の2種類のサイトが出来る。このためにミュオンの緩和時間が構造相転移温度の低温側で長くなるという異常を示す場合と急速に短くなる2種類の緩和時間が観測される。当然のことであるがTc極近傍では2種類のサイトのミュオンの緩和時間は共に短くなる。CeAgのAgをInで1部置換することによりフェルミ準位付近のEgバンド(Sdバンド)をInの伝導電子が占め1%以上のIn濃度ではdバンドによる1次の相転移になる(バンドヤ-ンテラ-効果)。我々はCeAgとの比較のためCeAg_<0.97>In_<0.03>のμSRの実験を行った。CeAg_<0.97>In_<0.03>ではf電子の磁気異方性効果は小さく構造相転移に伴うミュオン緩和に異常は観測されなかった。この原因としてd電子によるf電子のscreening効果、構造相転移温度が(Tu【similar or equal】40K)がCeAg(T_Q【similar or equal】17.5K)より高温になるためf電子の磁気モ-メントの熱的ゆらぎの効果が大きい等が考えられ、現在研究中である。
|