研究概要 |
私達は、1980年代当初から「位相比較法による超音波測定装置」の開発を進めており、現在では世界最高水準の音速分解能Δu/U=10^<ー7>を達成している。本研究でもこの超音波測定装置を用い、f電子係とくに希土類化合物の弾性的性質の研究を系統的に進めてきた。希士類化合物の4f電子は内殻に位置するため一般にま局在する傾向が強い。しかし、4f電子と伝導電子との混成効果が顕著となる系では、重い電子や価数揺動と呼ばれる特異な多体電子状態が出現する。超音波で見ることのできる希士類化合物の弾性的性質は、その物質中の4f電子が局在状態にあるか、重い電子もしくは価数揺動にあるかに従って、それぞれ固性的な振舞を示す。本研究においても理解が深まり、とくに、SmB_6,CeNiSnにおけるエネルギ-ギャップが超音波によって確認された意義は大きい。 超音波による希士類化合物の音響的dHVA効果の研究も本研究の重要深題であった。本研究において、低温生成技術の大きな進歩があった。循環方談の^3Heクライオスタットを完成させ、循環方式で0.4kを、またOneshot方式で、0.32Kを10時間以上保持しながらの実験が同能となった。YCu_2,UB_<12>,Lasb,LaSn_3,CeSn_3などの音響的dHVA効果の観測に成功している。とくに、YCu_2,LaSn_3 においては、断面積が10^8Oe台の大きなファルミ面も観測し,通常の帯磁率によるdHVA効果と同等の実験が可能であることを改めて実証した意義は大きい。また、この間、東北大科研附属工場では、重い電子の音響的dHVA効果の研究を目的とした大型希釈冷凍機の開発製作がおこなわれ、8mkの極低温を達成した。典型的な重い電子系であるCeB_6において音響的dHVA効果の観測に成功し、今後における極抵温での重い電子系の研究の推進が可能となった意義は大きい。
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