ポジトロニウムは、対消滅で発生するγ線の角相関やドップラ-幅を調べることによってその運動状態に関する詳しい情報が得られるユニ-クな原子である。ポジトロニウムを作らないで消滅する陽電子とポジトロニウムとでは、通常寿命が異なるので、寿命と運動量の2パラメタ測定を行えば、得られる情報が飛躍的に向上すると期待される。しかしこの種の測定を、高い分解能が得られる角相関法と組み合わせようとすると、検出器の張る立体角が小さくなること、3重同時計測を必要とすることなどのために統計精度が下がってしまう。 本研究では、新しい工夫によってγ線の検出効率を上げて、それに対応した。ただし、当初計画していた、シンチレ-タ+光電子増倍管の個別アレイを用いる方式を変更して、最近新しく開発された位置敏感型光電子増倍管を用いてシンチレ-タのみを個別アレイとすることにした。これによって、装置をコンパクトにし、かつ、製作コストを下げることができた。また、角相関装置の可動カウンタ-は、通常、長大なア-ムを用いて、カウンタ-が常に試料の方を向くようにするのであるが、我々は特別な工夫によって、ア-ムなしでこれが可能になるようにした。光電子増倍管からの信号はCAMACシステムで処理する。そのためのソフトウエア開発を兼ねて、主装置の設計・製作と平行して、半導体検出器を用いた時間・運動量相関測定システムを作成した。このソフトウエアに、必要な変更を加えることにより、本実験用の信号処理システムを完成させ、実験を開始する予定である。
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