研究概要 |
ハロゲン架橋混合原子価白金錯体が二重縮退構造をもつ一次元鎖であることに注目し、この鎖上に生する素励起態を研究した。 電荷移動吸収帯を光強励起するとバンド間に2つの吸収帯が現れること、この光励起欠陥はスピンをもつことを発見した。一方、ハロゲンド-ピングは先の光励起と同じ吸収及びスピン共鳴吸収を引起こし、電気伝導も増加することを見い出した。これらの結果と光誘起吸収が鎖方向に強く偏光していることから欠陥は、鎖上にできた電荷とスピンを持つポ-ラロン(光励起の場合はポ-ラロン対)状態であることがわかった。 電気伝導を支配しているのは、ポ-ラロンの鎖間ホッピングであること、ホッピングは鎖間に入ったハロゲンド-パントを中継点としていることを光キャリ-の飛行時間法による移動測定から明らかにした。 ポ-ラロン対のダイナミックスを熱発光及びESR温度依存性より明らかにした。すなわち、光強励起によって結晶中に形成された多数にポ-ラロン対が、その後温度上昇によって対消滅する際に発する熱発光及びESR信号の滅少を測定した。その結果、ポ-ラロン対はポテンシャル障壁0.12eV、頻度因子2X10^3(sec^<ー1>)で再結合する。これからポ-ラロン対の寿命は室温で0.1秒、77kで10^6秒程度であることがわかった。 高ド-プによって生じた高密度ポ-ラロンはP^++P^+→S^+S+(バイポ-ラロン)の反応が起こることを見い出した。このことからハロゲン架橋白金錯体においてもソリトン生成エネルギ-はポ-ラロンより小さいことがわかった。 以上の結果は[Pt(en)_2][Pt(en)_2][Pt(en)_2X_2](ClO_4)_4,X=Clの結果であるが、トランスファ積分がより大きなBr,l化合物においては光励起欠陥は不安定で、X=BrではESRスペクトルはsingle lineとなり、ポ-ラロンは低温においても錯状を自由に運動していることがわかった。
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