研究概要 |
CeNiSnがエネルギ-ギャップを持つ新しい型の近藤格子化合物である事は前年度までに明らかにした。本年度は、ギャップ形成の起源に迫るべく,より良質で大型の単結晶を育成して,種々の測定手段による研究を進め,以下の様な知見を得た。 1.良質単結晶の育成 赤外線集中加熱炉を用いた浮遊帯域溶融法によって,直径7mm,長さ25mm程度の単結晶の育成に成功した。 2.エネルギ-ギャップの構造 1ケ以下で,比熱がT^2に比例し, ^<119>Snの核緩和率がT^3に比例するという結果は,いずれも,ギャップがV字型の構造を持つ事を意味する。この状態での伝導は,二種類以上のキャリア-によって担われている。 3.磁場によるギャップの異方的消滅 V字型のギャップを持つ基底状態は、a軸方向に印加した磁場にのみ極めて敏感である。a軸方向の14Tの磁場下では、b軸方向の電気抵抗は,半導体的振舞いから重い電子系的振舞いに転じる。電子比熱係数は100mJ/K^2molへと増強され,a軸方向の磁化もメタ磁性的に伸びる。 4.エネルギ-ギャップの起源 帯磁率と電気抵抗のa軸方向においてのみ12Kに現われるピ-クは、反強磁性的スピン相関の発達によるものと考えられている。このピ-クはa軸方向に14Tの磁場を印加すると消失し,この時ギャップも消滅する。この結果は、反強磁性的スピン相関がギャップ形成を誘発するという我々のモデルを強く支持するものである。 5.反強磁性的スピン相関の探索 どの様なスピン相関が低温で発達するのかを明らかにする為に,現在グルノ-ブルで中性子非弾性散乱実験を継続中である。
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