研究概要 |
本研究の第1年度は主に金属薄膜生成超高真空装置の立ち上げと,本研究費で交付された主研究設備である超伝導磁石の選定・発注・据付けとテストに努力がはらわれたが,本研究年度(2年度)はその金属薄膜生成装置(MBEと略称)を利用して金属超格子膜を生成する作業を行った。二つの超格子系を差当り考えており,一つはBi・Sb超格子で,もう一つはEu・Sr超格子である。Bi・Sb超格子についてMBEでの試料をつくり電気的性質を測った。(Bi200A^^°・Sb50A^^°)20周期膜については微少ギャップ6.3meVの半導体がえられた。(Bi1000A^^°ーSb250A^^°)4周期膜についてはギャップ値は2.8meVと低下した。よいエピタキシャル膜をうる条件としてBi膜のBaF_2基板上への蒸着を,蒸着速度,基板温度を種々変えて行い,1〜2A^^°/秒,基板170℃付近にエピタキシイの良条件があることをつきとめた。これを基本条件として,Bi・Sb金属超格子膜のエピタキシャル性を良好なものとして,組成による金属・半導体推移などの電気的性質を,低温・強磁場を用いて探究する予定である。第2の目標であるEu・Sr系については成膜の大気雰囲気中での防触について,SiO等のパッレベ-ションを調べた。 黒鉛層間化合物はステ-ビングをつくり,究極の超格子と見ることができる。黒鉛にBr_2をインタ-カレ-トする途中状況を電気抵抗とホ-ル効果でその場観察するという,これまでなされなかった方法を案出した。Br_2の侵入にともないステ-ジが低下し,またプリスティン物質の電子伝導性が,アクセプタ-として働くBr_2の増大により正孔伝導性に転換することがその場観察から見出され,始めから最終状態にいたるまでの電子濃度・正孔濃度の時間的変化が数量的に導出された。 第3年度は超伝導磁石を活用し,超格子膜,ハロゲン化物等の伝導性と電子構造の研究に向かう予定である。
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