1.整数量子化ホ-ル抵抗の高精度測定:高精度量子化ホ-ル抵抗の自動化測定装置の中で、直流電流比較型電位差計が自動平衡型に改造することにより、参照抵抗と測定する量子化ホ-ル抵抗との間に数十ppm程度の差がある場合にも精度を落とすことなく抵抗比較が可能となった。けれども、当初に計画したSi-MOSFETの量子化ホ-ル抵抗のランダウ量子数依存性を測定することはできなかった。しかし、GaAs/AlGaAsヘテロ接合試料についてi=2と4の量子化ホ-ル抵抗の比較を高精度で行うことができた。その結果は、4XR_H(4)ー2XR_H(2)=(0.04±0.014)ppmであった。この値は前年度に測定した同一試料で得た結果と符号が反対である。ホ-ル抵抗測定用の電極の抵抗の変化に原因があると考えられる。この結果は1990年6月に開催される電気磁気精密測定会議で報告する予定である。 2.分数量子ホ-ル効果に関連する実験・強磁場下の低電子濃度領域の基底状態を調べることを目的として、ランダウ準位の充填率が1/7以下の領域でホ-ル抵抗と対角抵抗の測定を、27Tまでの磁場と30mKまでの温度で行った。しかし、充填率1/9に対応する構造は見いだされなかった。充填率1/5以下の低電子濃度領域で対角抵抗に異常に大きな温度依存性が見いだされた。その温度依存性と電流依存性を測定した。磁場に比例する活性化エネルギ-と、電場には依存しないことから、ウイグナ-結晶ではない電子状態が考えられる。 3.整数量子ホ-ル効果に関連する局在の実験:SiーMOSFETのホ-ル伝導率と対角伝導率を25Tの磁場で電子濃度による変化と一定電子濃度で磁場による変化との温度依存性を測定し、いずれの測定法を用いて得た結果も、局在の臨界指数が計算機による理論計算の結果を支持することが確かめられた。
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