研究概要 |
1.整数量子化ホ-ル抵抗の高精度測定:量子化ホ-ル抵抗の参照抵抗器に対する相対測定の精度を0.01ppm以内で安定に測定できるように,また,容易に試料の交換ができるように測定システムを再構築した。温度を0.4Kまで下げることが可能で,試料交換が容易な試料ホルダ-を製作し,直流電流比較型電位差計を用いた自動平衡型測定系を改良した.その結果,電流10μAで,約6時間で20点の測定結果の標準偏差を,GaAs/AlGaAsへテロ接合試料のi=2の量子化ホ-ル抵抗を0.01ppm以内で,同じくi=4のそれを0.015ppm以内の精度で相対測定を可能にした. 2.強磁場下の2次元系の局在の実験:Si(001)面nチャンネルMOSFETの高移動度ならびに低移動度試料について,横長ホ-ル電流用電極を用いて対角伝導率とホ-ル伝導率を,縦長ホ-ル・バ-電極を用いて対角抵抗率とホ-ル抵抗率を,また,コルビ-ノ円板電極を用いて対角伝導率を,それぞれ,ゲ-ト電圧の関数として磁場と温度を変えて測定した.測定は,23T,20Tおよび14Tの磁場で,1Kから50mKまでの温度で行った.対角伝導率ピ-クの電子濃度依存性の半値幅,ホ-ル伝導率の電子濃度微分の半値幅とホ-ル抵抗率の電子濃度微分の半値幅の温度変化率はほぼ一致することが明かとなった.また,これらの温度変化率は試料の移動度に依存しないこと,これら半値幅の値は移動度に依存し,低移動度試料の半値幅は小さいことが判った.これらの現象の物理の理解は今後に残されたが,強磁場下の2次元電子系の局在の解明のための有力な手がかりを与えるものである. 3.分数量子ホ-ル効果の実験:GaAs/AlGaAsへテロ接合試料について測定を行ったが,特記すべき結果は得られなかった.
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