研究概要 |
1.整数量子化ホ-ル抗体の高精度測定 :GaAs/AlGaAsヘテロ接合試料の量子化ホ-ル抗体R_H(4)およびR_H(2)をこれらの値と極めて近い参照抵抗器R_R(4)とR_R(2)に対して比較測定を行った。R_R(4)とR_R(2)の抵抗値は,極低温電流比較抵抗ブリッジを製作し、100Ω標準抵抗器の抵抗値と比較測定した。温度0.5Kで,R_H(4)に対する磁場5T,R_H(2)に対する磁場10Tで測定し、4R_H(4)ー2R_H(2)(0.037±0.018)ppmの結果を得た。さらに、測定システムを改良し,10μAの電流を用い,約6時間で20点の測定値の標準偏差をR_H(2)については0.01ppm以内に,R_H(4)については0.015ppm以内にすることができた。 2.強磁場下の2次元系の局在:SiーMOSFET試料を用い,50mKまでの低温度で27Tまでの強磁場下で,ホ-ル電流法による対角伝導率とホ-ル伝導率の測定,コルビ-ノ電極による対角伝導率の測定,ならびに縦長ホ-ルバ-による対角抵抗とホ-ル抵抗の測定を行った。ホ-ル伝導率の電子濃度に対する微係数の温度依存性は,0.2K以下の低温度で飽和特性を示した。この温度依存性は試料の移動度によらなかった。飽和領域におけるホ-ル伝導率の電子濃度についての微係数のピ-ク値は(磁場/移動度)の平方根に比例する。この結果は,磁場と移動度の効果をSCBA理論にしたがって取り込むと,移動度端は試料の移動度によらないことを示している。 3.分数量子ホ-ル効果に関連する実験:移動度が50m^2/VsのGaAs/AlGaASヘテロ接合試料を用い,ランダウ準位の充填率が1/7以下の領域での対角抵抗とホ-ル抵抗の測定を27Tまでの磁場と30mKまでの低温度が行った。その結果,充填率が1/9に対応する構造は観測できなかった。充填率が1/5以下の領域で対角抵抗に異常に大きな温度依存性が見いだされたが,その現象の解明は今後の課題として残された。
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